2013年6月18日火曜日

博士課程の収入源について


この記事では、早稲田大学の博士後期課程における収入について、書いていきます。
博士課程に進むことを迷ってるような後輩たちの役に立てばうれしいです。真面目な記事です。笑

ここに書いてあることは、博士後期課程に進学するに当たって、生活とかが不安だったので色々と自分で調べたことです。もしかしたら間違ってることなどもあるかもしれませんので、参考程度に読んでもらえればと思います。特に早稲田大学に特化しているので、他の大学では必ずしも正しくないことも書いてあるかもしれません。


というわけで、始めます!



噂では早稲田は博士に進むと学費がチャラになるとかって言われてたり、いろいろな情報が錯綜しているわけです。
そこで、いろんな事務所に通ってそういったところの真偽を確かめてきました。
調べても出てこないような情報もあるので、せっかくだからここに残しておきます。

※ここに書いてあるのは2012年~2013年にかけて集めた情報です。ソースは事務の人に直接聞いたものや、各制度のWebサイトなどがほとんどです。主観も混じってます。



博士課程で得られる主な収入

1.日本学術振興会特別研究員(DC1, DC2)
2.奨学金(日本学生支援機構、学内、民間奨学金等)
3.助手として大学に就職
4.TA、RA
5.アルバイト

だいたいこんなもんです。
以下にそれぞれの項目について詳しく書いていきます。



1.日本学術振興会特別研究員(DC1,DC2)

通称「学振」です。
DCで毎月20万円の研究奨励費(いわゆる給料)がもらえます。
これに採用されると、研究に専念するだけでお給料が入ってくるという快適な博士生活が過ごせます。たぶん。
DC1はD1の4月からの3年間。DC2はD2以上から卒業するまでの間のMax2年間。

これに加えて、科研費という研究に使うためのお金(実験に必要なものとか、出張旅費)が
年間60~100万くらいもらえます。(採用年度と分野によって変わるみたいです。特別枠に認められるとMaxで150万円)
博士進学を考える人はまず真っ先にこれを目指すでしょう。研究者としてスタートする上での第一歩的なものにも位置しています。

・採用されるには:
「研究計画書(A4で10枚くらい)」+「指導教員による評価書」
を5月頃に提出します。(大学によって締切は違います)
その書類を6人の審査員が審査して、その審査結果が秋にきます。
審査の得点が上位の人は書類だけで採用可否が決まります。
合格ボーダー周辺の人は11月に面接があります。
この面接に通ると、晴れて学振の特別研究員になれるわけです。

博士に進学することを考えてる人は、学振に通すためになるべく多くの実績とかを残せるといいと思います。
具体的には、主著ジャーナルがあるかないかってのがかなり大きな要素になるようです。(よく言われている噂ですが。)
DC1の場合はみんな業績は少ないから研究計画しだいと言われるようですが、業績があるに越したことはないんじゃないかと思います。
僕もめでたく特別研究員に採用されたので、そのときの経験とか詳しいことについてはまた別の記事でまとめたいと思います。

学振の特別研究員は基本的に他から収入を得ることを禁じられているのですが、将来研究職や教育者になるためのトレーニングとしてのアルバイト(具体的にはTAやRA)に関しては、週に5時間以内で研究に支障の出ない限り認められています。
学振の特別研究員は年金とか保険とかを全部自分でやらなければいけなく、給料から勝手に引いてくれるとかはありません。手取りが20万円だけど、そこから自分で月2万円分くらい払わなければいけません。週に5時間のTAかRAをすれば、その分くらいは稼げます。


2.奨学金(日本学生支援機構、学内、民間奨学金等)

学振は誰しも採用されるわけではないです。倍率が高いので。
なので、学振の次は奨学金を目指す人が多いかと思います。
ほぼすべての奨学金が学振との併給ができないです。
早稲田の場合助手の人も奨学金はもらえません。
それぞれ解説していきます。

○日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構の奨学金は、学部の頃からもらえる定番の奨学金です。
無利子の第一種と利子付きの第二種があります。
額もいろいろと種類があります。
博士後期課程だと、第一種で月80,000円or12,2000円。第二種で月50,000~150,000円の数段階。

ここで重要な点がひとつ。
この日本学生支援機構の奨学金の第一種には、「特に優れた業績による返済免除」という制度があります。
論文書いたり、すごい学会で発表したり、TAとかやって教育活動に貢献したりすると免除になる可能性があります。
いろんな評価項目があります。論文は10個まで業績として載せられるようなので、なるべく評価の高い学会での発表が重要です。
これにより、Maxで122000円×36ヶ月=439万円が給付されることになるわけです。(年間にすると146万円)
全額免除とならなくても、半額免除になる場合もあります。

平成16年までは助手とか教員(小中高含む)とかになるとこの奨学金の返済は免除になったらしいですが、
今はそれに代わって業績による免除という制度になりました。

○学内奨学金
早稲田の場合、博士に行くと授業料は免除になるって噂が飛び交ってます。
その真相がこの学内奨学金です。

結論から言うと、授業料は免除になりません!
授業料は通常通り払った上で、数ヵ月後に授業料相当の奨学金がもらえるという話です。

早稲田の博士後期課程の学費(授業料+実験実習費+施設費+その他諸々)は、
理工の場合、「80万~86万円/年」です。
博士から早稲田に入る場合はさらに入学金が20万円くらいかかります。
20代半ばになって収入がない上に学費を払うのはかなり大変だと思います。
そこで、対象者全員がもらえる学内奨学金があります。

大学院博士後期課程若手研究者養成奨学金
大学院博士後期課程若手研究者養成奨学金」は年額60万円(研究科によっては40万)の給付奨学金です。
ざっくり言うと、30歳未満の博士課程の学生ならもらえます。ただし、学振との併給は不可です。
学費の中の「授業料」は先進理工学研究科でだいたい64万円くらいなので、これによって授業料相当が
チャラになるわけです。差引で4万円くらいは払わないといけないですね。
さらに、施設費とかいろんなのもあるので、年間24万円くらいは払うわけです。

これはあくまで奨学金なので、学費は払わなければいけません。
奨学金の給付前に振り込まないといけないですね。(学費納入期限はわかりませんが・・)

日本学術振興会特別研究員DC採用者支援奨学金
上のやつは学振に採用された人はもらえません!
じゃあ学振に採用されたら学費は全額払うのか!って思いますよね?
そこで「日本学術振興会特別研究員DC採用者支援奨学金」という給付奨学金があります。
年額60万円(研究科によっては40万円)がもらえます。
つまり上のやつと一緒です。名前が変わっただけ。
学振採用者はこの奨学金だけはもらえます。他はだめです。
学振側の決まりで所属大学が授業料相当額を補助する目的で給付する奨学金のみ受け取れるみたいです。

・その他学内奨学金
他にも大隈記念奨学金とか、いろいろな学内奨学金があります。
採用人数は限られてますが、ほとんど(すべて?)が給付です。学内奨学金は基本1つしか採用されないです。
民間の奨学金とは併給できる可能性があります(それぞれの奨学金の要項参照)。
また、早稲田の場合、給付奨学金の上限は、学費相当までしか給付が許されません。
なので、複数の給付奨学金に採用された場合は、どれかを辞退したり減額したりで、Max85万円くらい(学費分)に抑えなきゃいけないわけです。

○民間奨学金
いろいろあります。
給付のもあれば貸与のもあります。額も様々です。
そんな中、学振レベルの素晴らしい奨学金があります。
「吉田育英会ドクター21」という奨学金です。
学振と同じ月額20万円の給付+Max250万円の学費補助(さらに出張費などもこれで賄えます。)
があります。科研費は出ませんが、個人の負担としてはこれが一番少なくて済みます。
ただし、全国で10人くらいしか採用されないので大変な奨学金です。
学振と同じような研究計画等に関する書類を提出しなければいけないのですが、学振の提出期限の1~2か月前が締切なので、学振申請の練習のためとしてもいいかもしれません。


3.助手として大学に就職
博士課程に学生として在籍しながら、助手になることができます。
助手になると、一般的な修士卒と同じだけの給料がもらえます。
さらに、学費は免除です。(授業料だけでなく学費全部)
ボーナスも年に2回あるし、福利厚生なんかも他の職員と一緒です。
そのため、助手として仕事もしないといけません。
具体的には授業(実験や演習)を担当したり、レポートを採点したり、学科の雑務をやったり。
以前(平成16年度)までは助手になると日本学生支援機構の奨学金が返還免除になったためメリットが多かったですが、仕事が増える分学振の方が良さげです。

しかし、非公式な情報ですが理工は2011年度から、D1の学生は助手に採用しないような方針になったそうです。
(事務の人が言うには。)
ただし、MNC(メディアネットワークセンター)とかはどうやらD1からでも助手になれるようです。(これは未確認情報です)

一部の私大では、博士課程に上がると同時に助手になるのが普通のようなところがあって、給料も高めなところとかがあるようです。



4.TA、RA
○TA
TA(ティーチングアシスタント)については、うちの専攻の場合には通称「博士TA」というのがあります。
研究室で開講されているゼミ科目のTAとして雇ってもらい、ゼミに出たり、修士学生等の指導をすることでお給料がもらえるというものです。
時給はTA水準なので低めです。それに一人当たりの規定時間とかも決まっていて、1年間やっても10万円もいきません。学費の足りない分の足しになるかならないかってところです。

○RA
RA(リサーチアシスタント)については、必ずできるものではありません。研究室によると思います。
大きいプロジェクトを抱えてる研究室なら、そのプロジェクトのRAとして雇ってもらえる余地はあるかと思います。
RAは具体的に何をするのかというと、その研究プロジェクトの遂行のために研究をすることです。一応アシスタントなので、プロジェクトの補助的な意味合いがあるみたいなのですが、まぁ研究をすればよいようです。ただ自分の研究テーマがプロジェクトとまったく関係ない場合は、文字通りプロジェクトのアシスタントとして実験の補助とかをやることでお給料をもらうということになるかと思います。
RAはTAに比べると時給が高いです。

○TA/RA等のルール
早稲田の場合、学内でのTA,RA等のアルバイトは全部合わせて週に20時間未満の契約しかできません。マックスで19時間50分。
それと1日の労働は8時間未満、6時間以上の労働につき1時間以上の休憩が必要などのルールもあります。
あとRAとTAの兼業にもいろいろ細かいルールがあります。

○TA/RAの雇用期間に関するルール
2013年度から始まったルールなのですが、早稲田で5年間連続でTAやRA、助手などの有期雇用の職に就くことができなくなりました。これは有期雇用で5年間雇った人を無期雇用として雇わなければいけない的な法律が決まったからっぽいです。詳しくはわかりませんが。
つまり、修士2年間と博士3年間TAかRAを連続でやっていた人は、博士卒業後に早稲田の有期雇用(助手や助教、ポスドク系)の職には就けないわけです。
これは2013年度から始まったので、それ以前のTAやRAはカウントされないようです。
つまり、最長で2018年まで連続で有期雇用の職に就いてしまうといけないわけですね。
そうなったら大変というわけで、半年の有期雇用につき3か月、1年の有期雇用につき半年の空白期間があれば、5年連続のカウントはリセットされるというルールがあります。
つまり、4年半連続でRAとかをやって、次の半年は無職でいれば、また5年未満の有期雇用の職に就けるというわけです。
これは早稲田内(同一機関内)だけでの話なので、空白の半年の間は別のアルバイトとかしたりすればいいって話です。そこまでして同一の機関の有期雇用にしがみつくかどうかは別の話ですが。ただ、これからは学部からTAをやってた人などはよく注意しないと博士課程に進んでこれからというときにRAに就けないという可能性も出るかもしれません。その辺は雇用する側も注意を促していますが。



5.アルバイト

最後は学外での普通のアルバイトですが、博士学生の本分は研究にあるので、研究時間を削るアルバイトはなるべく避けたいところです。。
ただ、博士学生は注意してないと家と研究室の往復生活になってしまうので、外の刺激を求めるという意味でアルバイトをするのはいいかもしれません。






以上が博士課程の学生の主な収入源となりうるものだと思います。

他にも一時的な収入として、給与ありのインターンなど、社会経験にもなるしいいと思います。
博士学生の場合は、研究ができて、その研究成果を発表可能なインターン先などにいけるといいですね。そういうところは給与がなかったり、少なかったりしますが。。


こんな感じで博士課程在学中の収入について、特に早稲田大学の理系の場合の具体例を紹介しましたが、僕は今博士卒業後の収入元についていろいろと知りたいなとか思ってます。先輩が具体的にまとめてくれていたりしたら嬉しいです。